いつもご覧いただきありがとうございます、店主の小野です。
休日のバイクツーリング。エンジンの鼓動を感じながら名もなき道を走り、かつてその地で繰り広げられた戦国武将たちの野心や生き様に思いを馳せるのは、何にも代えがたい大人の贅沢です。
今回は、我らが福岡から足を延ばし、大分県豊後高田市へと愛車を走らせてきました。 のどかな山あいの都甲(とごう)地区にひっそりと佇む史跡「金宗院跡(きんそういんあと)」。ここは、九州戦国史においてあまりにも壮絶で、そして深い忠義に生きた悲運の武将・吉弘統幸(よしひろ むねゆき)が眠る場所です。
【👤 忠義の傑物・吉弘統幸(よしひろ むねゆき)プロフィール】
- 生没年:永禄6年(1563年)〜 慶長5年(1600年)(享年38)
- 主君:大友義統(おおとも よしむね)
- 人物像:豊後・大友氏の重臣。類まれなる武勇と、主君への絶対的な忠義を併せ持った九州屈指の義将。のちに「西国無双」と称される立花宗茂の従兄弟(いとこ)にもあたります。大友家が改易され浪人となった際、その才能を高く評価した天才軍師・黒田如水(官兵衛)から手厚く保護され、家臣として熱烈なスカウトを受けました。しかし、旧主・大友家が再起をかけて挙兵したと知るや、大恩ある黒田のもとを離れ、負け戦と知りながらもかつての主君のもとへ馳せ参じたという、損得勘定を超えた真っ直ぐな生き様を貫いた男です。

⚔️ 住職が命懸けで持ち帰った首級と、義将・吉弘統幸
吉弘統幸は、大友氏の重臣であり、岩屋城で玉砕した名将・高橋紹運の甥にあたる人物です。彼もまた、叔父譲りの類まれなる武勇と、主君への絶対的な忠義を併せ持った九州屈指の義将でした。
慶長5年(1600年)、関ヶ原の戦いに連動して起こった「九州の関ヶ原」こと石垣原の戦い。統幸は、豊臣方についたかつての主君・大友義統のため、大恩ある黒田如水(官兵衛)の大軍を相手に孤軍奮闘し、壮絶な討ち死にを遂げました。 その悲報を聞いた当時の金宗院の住職は、敵陣へと単身忍び込みます。そして命がけで統幸の首級(しゅきゅう)を奪い返し、この金宗院の寺内へと密かに持ち帰り、手厚く葬ったと伝えられています。
泥舟と分かっていても主君のために命を懸けた統幸と、その彼のために命がけで走った住職。ここには、魂が震えるほどの本物の「忠義」がありました。











🍂 栄華の終わり。廃寺となった金宗院の「現在」
金宗院は室町時代の永享八年(1436年)に開基され、大友三大老・吉弘氏の菩提寺として、昭和初期の大東亜戦争の頃までは長く栄えていたそうです。
しかし、現在この地を訪れると、そこにあるのは歴史の残酷な現実でした。 戦後に無住(住職がいない状態)となって廃寺となり、かつて立派だった寺屋は崩壊。吉弘家のご子孫や地域住民の方々が懸命に手入れをされているとはいえ、やはり全体的に「朽ちている感」は否めません。
敷地内には、統幸公の没後400年(おそらく2000年頃)を記念して建てられたと思われる記念塔と標札もありましたが、無残にも折れ曲がり、文字を読むことすらできない状態になっていました。 私が現地で確認できた範囲では、国や県、市の指定文化財といった仰々しい看板もなく、豊後高田市観光協会の文字がひっそりと見当たるだけでした(もし私の見落としでしたらごめんなさい)。
💡 2200の武将たちと、私たちにできること
この崩れかけた史跡の前に立ち、私はふと考え込んでしまいました。
歴史シミュレーションゲーム『信長の野望・新生』には、戦国時代から江戸時代初期に限って言っても、実に2200人以上の武将が登場します。彼らがゲームに登場するということは、必ず何らかの歴史的資料や痕跡が残っているということです。幕末や明治時代まで含めれば、その数は天文学的なものになります。
以前訪れた龍造寺家や鍋島家のように、菩提寺が立派に管理されている大名家もあるでしょう。 しかし、この吉弘統幸のように、家が途絶えたり廃寺となったりして、ご子孫や地元の有志の方々の手だけでギリギリ管理されている場所が、全国にどれだけあるのでしょうか。比較的マイナーな武将たちの墓所は、きっとどこもこのような厳しい状況なのだと思うと、歴史好きとして胸が痛くなりました。
もちろん、史跡を維持管理するには莫大なお金がかかります。 寄付をするのが一番手っ取り早いのでしょうが、私一人の庶民の力でできることにはどうしても限度があります。
これだけ胸を熱くさせてくれる先人たちの生きた証と、歴史のロマン。それを風化させず後世に残していくために、何か良い手はないものか……。 静かな山あいでバイクのエンジンを切り、朽ちゆく供養塔を前に、深く考えさせられる旅となりました。
皆様は、地元の小さな史跡を訪れた際、どんなことを感じますか? ツーリングの目的地に、ぜひこうした「名もなき(しかし熱いドラマを持つ)史跡」を選んでみてください。きっと、いつもとは違う景色が見えてくるはずです。